「もっと変化球を覚えたほうがいいんじゃない?」
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<6>
共有する思い。それがあるから楽しかったんだ。<全4ページ>
初先発で心掛けたこと
翌日、四日目。
僕は先発することになる。昨日のこともあったから、いろいろと考えてとにかく「テンポよく投げる」ことを心掛けるようにした。あれ以降、試合を観ながら、一球一球の間が長くて守備のリズムができていないんじゃないか、と感じるシーンが少なからずあったからだ。
実際、打たれ出すと止まらないときというのは、打ち取ったと思った当たりが、ちょうど野手のいないところに飛んで、抜けたり、ポテンヒットになったりするものだ。
テンポよく、テンポよく。
キャッチャーの返球を受ければすぐにサインを見て、投げることに集中した。
結果は2回1失点。初回はツーアウトからフォアボールを出してしまったけれど、今年オリックスの育成に入団した赤松幸輔選手をライトフライに打ち取り無失点。2回に内野安打で先頭バッターを出し、その後ツーアウト3塁になって迎えた同じトライアウト受験生にタイムリーヒットを許してしまった。ライバルでもあったし、自信を持って投げた球だっただけに悔しかった。
それでも、全体的にはまずまずの出来といえた。
なによりこの日大きかったことは、武器を手に入れたことだった。
それは、カットボール。
試合が始まる前のこと。前回も書いたけれど、このトライアウトは香川オリーブガイナーズのスタッフさんが手伝ってくれていた。その投手コーチである伊藤さんが投球練習を見ていて、こう言った。
「もっと変化球を覚えたほうがいいんじゃないですか?」
僕の球種は、ストレート、ツーシーム、シュート、カーブそれにチェンジアップ。伊藤さんは続けた。
「カットボールとかどうですか」